大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)930 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人野村幸由の上告理由について。

原判決の引用する第一審判決が確定した事実関係によれば、被上告会社の支配人

訴外Dは、原審共同控訴人Eが、訴外F食品株式会社において他から割引を得るた

め上告会社宛に振り出した本件約束手形につき、上告会社より割引のあつ旋を委託

された者にすぎず、右割引金をもつて訴外G通商株式会社の債務の弁済に充当する

旨の合意をする権限などは全然これを有しないという事情を知らなかつたものであ

り、被上告会社は、Eを正当な権利者として同人のため本件手形を割り引き、これ

を取得したものである。したがつて、被上告会社が訴外H銀行I支店から本件手形

の再割引を受け、割引金をもつて判示のごとく債権の弁済に充てた後、H銀が本件

手形を支払のため呈示したが、支払を拒絶され、上告会社が振出人F食品株式会社

の要望により、被上告会社に対し、H銀から本件手形を買い戻すための金員として

判示六三万円を出捐したという事態が生起したとしても、被上告会社がかかる一連

の事態を予見すべき注意義務あるものとはいえないし、また、被上告会社がかかる

事態を予見していた事実ももとよりないのであるから、仮りに前記出捐をもつて上

告会社の損害なりとしても、これを被上告会社に帰せしめるべき故意・過失の要件

を欠くものといわなければならない。原判決が論旨摘録のとおり認定判示して上告

会社の被上告会社に対する損害賠償請求を排斥すべきものとした判断は、結局、叙

上と同一趣旨に帰するものであり、当裁判所も正当としてこれを是認する。

しかして、上告会社は、原審において、本件損害賠償請求の原因として、原判決

事実摘示記載のような主張をしたものであるが、右は、原判決の引用する第一審判

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決の認定と相容れない事実を主張し、もしくは、当該事実を前提として主張するも

のであり、判文上自ら排斥されたものというべく、判断遺脱・審理不尽をいう論旨

は、原判決を正解しないことによるものか、または、独自の見解に出でたものであ

つて、採用に値しない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 河 村 又 介

裁判官 石 坂 修 一

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